TUFS Cinemaアラブ映画特集『フェミニスト?インシャッラー』を開催
2025.07.25
2025年7月14日(月)、アゴラ?グローバル プロメテウス?ホールにて、TUFS Cinema アラブ映画特集『フェミニスト?インシャッラー:アラブ?フェミニズムの歴史を語る』を開催しました。
本作品は、チュニジア系フランス人の女性フェリエル?ベン?マフムード監督が制作したもので、19世紀末以降のアラブ?フェミニズムの「誕生」から、2010年代の若い活動家たちによるインターネットやアートを用いた運動まで、レバノン、チュニジア、エジプト、モロッコ、アルジェリア、サウジアラビアを舞台に、120年以上の展開を描いています。「女性の解放」がナショナリズムや植民地主義からどのような影響を受けたのか、各地で何が求められ、どのような声があがってきたのか、未公開のアーカイブや活動家たちの独占インタビューを交えながら、アラブ地域のフェミニズムの過去と現在に迫ろうとする作品です。
本編上映後、本学アジア?アフリカ言語文化研究所の後藤絵美准教授が、映画の中のできごとや発言をまとめた年表を参加者と共有しながら解説を行いました。ムスリム(イスラーム教徒)が大多数を占めるアラブ地域で、女性に対する制限を取り除こうとする運動は、フェミニズムと呼ばれたり、呼ばれなかったり、呼ばれることを拒んだりしながら、宗教(イスラーム)を含む倫理との関りの中で紡がれてきたことを後藤氏は指摘しました。
続いて、3人のパネリストが登壇しました。北アフリカ地域の人類学を専門とする鷹木恵子氏(桜美林大学名誉教授、アジア?アフリカ言語文化研究所フェロー)は、本作品の物語の中心となったチュニジアのフェミニズムの歴史について、思想家や政治家、活動家たちによる行動の軌跡を国家フェミニズムと市民フェミニズムの相互関係から紹介しました。鷹木氏は、重要なのは運動のエージェンシー(行為体)は誰なのか、どこにあるのかという問いであると述べ、”Feminists Insha’Allah”というタイトルは、feminists(フェミニストたち)にエージェンシーがあることを示しているのではないかと問いかけました。
カイロ大学文学部哲学科講師のカラム?アッバース氏は、哲学を専門とする者として批判的に映画を観たと前置きした上で、西洋で好まれるトピックである「スカーフ」「性的自由」「身体」といったテーマを全面に出す本作品は「アラブ?フェミニズム」の話とは言い難いと述べました。アッバース氏は、映画の背後に文化的な植民地支配の構造があると指摘し、そうした枠組みを踏まえた上で本作品を観る必要があると述べました。
最後の登壇者である亜細亜大学国際関係学部准教授の岡崎弘樹氏は、本作品について、これはチュニジアとフランスにルーツをもつ監督がフランスで制作したものであり、これが語りかける相手はアラブの内部者ではなく、外部者であったのではないか、タブーを破るという立場を強調しつつ、外部で流布するトピックが多く取り上げられたのもそのためであろう、と述べました。岡崎氏はまた、それでもなお、本作品が内部と関わりうるのは、女性たちが抱いてきた「なぜこんな思いをしなければならないのか」という憤りが描かれることであり、その点において運動の系譜が明らかになっているとも強調しました。
トークセッションは日本語と英語で行われ、本学大学院博士前期課程の日英通訳?翻訳実践プログラムの大学院生が同時通訳を担当しました。時間はあっという間に過ぎてしまい、登壇者も参加者も十分に語れなかった部分がありましたが、アラブ?フェミニズムについての関心や疑問が深まる、TUFS Cinemaらしい内容の会となりました。平日夕方からの開催にもかかわらず、学内外から120名を超える方が来場しました。
参照:
?TUFS Cinemaウェブサイト
?本イベント情報
お問い合わせ先:
TUFS Cinema事務局(東京外国語大学 広報?社会連携課)
Email: tufscinema[at]tufs.ac.jp([at] を @ に変えて送信ください)



